!第十四回 遁甲之森(14-ed)
少年が李秀の袖を引いて言った。 「静かで怖いね。ねえ、お歌を歌っていいかな。得意なんだ」 「あら、そうなの。聴かせて」 李秀がほほ笑むと、少年は軽く咳払いして歌い出した。高い声の楽しい调べだった。 「上手だけど、でも……少し」 と萍鹤は顔をしかめた。音がどんどん高く、鋭くなって来る。二人はとうとう耳を塞いだ。しかし、头の中で钟が鸣るように激しく响き、二人は立っていられなくなった。 少年は歌いながら笑い、匕首(短刀)を手にしている。 「この子、ひょっとして!」 李秀は叫んだ。声はかき消されて伝わらないが、萍鹤は表情から読み取って颔く。 「魔星だったのね。でも、もう动けない」 萍鹤はうつ伏せに倒れてしまった。李秀も目眩がひどくなり、うずくまる。そのとき、地面に落ちている小石を见つけた。 「これだ」 李秀は素早く小石を二つ拾って耳栓にすると、戟を振るって少年を打った。 少年の歌が止まり、ばたりと倒れた。 首を振りながら、萍鹤が言った。 「杀してしまったの?」 「まさか。あたしの戟はね、双月牙の片方だけ刃を落としてあるの。峰打ちよ」 少年の身Tから、地楽星が抜け出る。萍鹤が飞墨を放つと、森の真上に飞んで消えた。 李秀が、気を失っている少年を抱え上げる。 「この森、まだ魔星がいるのかな。あたしたちだけでもはぐれないようにしないとね」 そう言って振り向いたとき、萍鹤の姿は消えていた。